1. 生成AI活用企業の29%が「配置転換」を検討——調査の概要
東京商工リサーチは2026年3月31日〜4月7日に「生成AIに関するアンケート調査」を実施し、4月27日に結果を公表しました。有効回答企業数は6,327社です。調査では、生成AIツールを「会社として活用を推進」している企業が20.3%にのぼり、5社に1社に達したことが示されました。
注目すべきは、生成AIを組織的に活用する企業のうち29%が「5年以内に、既存業務の効率化で従業員を配置転換する可能性がある」と回答した点です。大企業に限ると、この割合は47%まで上昇します。「AI活用=業務効率化」という一般論が、人員体制の見直しという具体的な経営判断として語られ始めていることが分かります。
2. 「方針未定」37.5%への低下が意味すること
同調査では、生成AI活用について「方針は決めていない」と回答した企業が37.5%で最多でした。この数字自体は依然として高いものの、前回調査(2025年8月)の50.9%からは13.4ポイントの低下です。約半数が「どうしていいか分からない」状態だった1年前と比べ、企業の意思決定が着実に進みつつあることを示しています。
企業規模別に見ると、この1年で最も動いたのは大企業です。組織的な活用を推進する大企業の割合は、前回調査比で16ポイント上昇しました。一方で中小企業は、個人利用と組織的な活用の両方がまだ広がりの途中にある段階とされています。「様子見」から「判断」への移行が、企業規模によって異なる速度で進んでいる状況です。
3. 配置転換の中身:29%と47%という数字の読み方
ここで注意したいのは、29%・47%という数字が「全回答企業のうち」ではなく、「生成AIを組織的に活用している企業のうち」の割合だという点です。まだ活用方針が定まっていない企業を含めた全体像ではなく、すでに一歩踏み出した企業に限定した数字であることを踏まえて読む必要があります。
また、調査で問われているのは「配置転換の可能性がある」という回答であり、具体的にどの職種・どの業務が対象になるかまでは公表内容から明らかになっていません。「効率化された分の人員を他の業務に振り向ける」ことも「配置転換」に含まれ得るため、この数字を即座に人員削減と同一視するのは早計です。とはいえ、活用が進む企業ほど人員体制の見直しを現実的な検討事項として捉え始めているという傾向自体は、経営判断の材料として無視できません。
4. 早期退職募集4%をどう受け止めるか
同調査ではさらに踏み込んだ項目として、「5年以内にホワイトカラーの早期退職募集を行う可能性がある」と回答した企業が4%あったことも示されています。29%・47%という配置転換の数字と比べると小さく見えますが、生成AIの活用が人事戦略の一部として語られ始めている事実は変わりません。
中小企業の経営者にとって重要なのは、この4%という数字に一喜一憂することではなく、「自社が生成AIを活用した先に、どんな組織にしたいのか」を早い段階で言語化しておくことです。配置転換を前提にするか、既存の人員で新しい業務を増やすのか。方向性が曖昧なまま活用だけが先行すると、現場の不安や抵抗を招きやすくなります。
5. 中小企業がいま決めるべき3つのこと
MIRAINAの提案:今回の調査結果を踏まえ、中小企業が生成AI活用を進める前に決めておきたいことを3点に整理します。
- 効率化した時間の使い道を先に決める:生成AIで浮いた時間を「配置転換」に使うのか、「一人あたりの担当業務を広げる」のか、「新しい付加価値業務に充てる」のか。方針を決めずに活用だけ進めると、現場は「自分の仕事がなくなるのでは」という不安から前向きに使えなくなります。
- 方針未定のままにしない:全体の37.5%を占める「方針未定」企業は、今回の調査結果からも分かるとおり多数派ではあるものの、着実に少数派へと向かっています。自社の立ち位置が「まだ方針未定」なのであれば、まずは経営層で「推進する・しない」を決めるところから始めることが、1年後の遅れを防ぎます。
- 配置転換より先に「学び直しの機会」を用意する:大企業で47%という数字が出ている以上、中小企業でも同様の議論は遠くない将来に避けて通れません。配置転換を検討する段階になってから慌てるのではなく、社員が生成AIを使いこなせるようになる研修機会を先に用意しておくことで、変化への対応力そのものを高めておけます。研修効果の測定方法はAI研修の効果測定を見直す記事も参考になります。
中小企業の生成AI活用が抱える構造的な課題については帝国データバンク調査に見る3つの壁の記事で、具体的なツール活用の第一歩はClaude for Small Businessの記事でも整理しています。自社に合った活用方針の策定や研修設計は、生成AI活用支援、AI研修でご相談いただけます。
6. まとめ:数字は「脅し」ではなく準備の合図
東京商工リサーチの調査が示したのは、生成AIを組織的に活用する企業の29%が配置転換を、大企業では47%が同様の可能性を検討しているという事実です。一方で「方針未定」の企業も37.5%と依然として多く、多くの中小企業にとってはまだ判断の途中段階にあります。
大切なのは、この数字を脅威として受け止めるのではなく、準備を始める合図として捉えることです。効率化した時間の使い道を先に決め、方針未定のまま時間を過ごさず、配置転換の議論が始まる前に学び直しの機会を用意する。この3点に早めに着手した企業ほど、変化を前向きな成長機会に変えられるはずです。


