1. AWSがAI検索フィルターを追加

AWSが2026年8月19日に発表したのは、Amazon Bedrock AgentCore Web Searchのコネクタバージョン1.2.0です。新たに、検索結果をドメインで絞るdomainFilterと、公開期間で絞るpublishedDateFilterが追加されました。米国東部に加え、欧州のアイルランドとアジアパシフィックの東京でもWeb Searchを利用できるようになっています。

今回のポイントは、回答を生成した後に不要な出典を取り除くのではなく、モデルへ検索結果を渡す前に条件へ合わない情報を除外することです。価格、在庫、規制、製品仕様のように更新が多い情報では、「何を検索するか」と同じくらい「どの情報源の、いつの情報までを使うか」が重要になります。

2. 何をどこまで制御できるか

ドメインフィルターにはinclude(許可)とexclude(除外)があり、それぞれ最大100ドメインを指定できます。公開日フィルターはISO 8601形式の開始・終了日時を指定し、境界の日付も検索対象に含みます。どちらも検索リクエストごとに変えられるため、同じAIエージェントでも、法務調査は官公庁、商品調査はメーカー公式サイトというように範囲を切り替えられます。

設定制御する内容実務例
許可ドメイン検索してよい情報源官公庁・メーカー・公式IRだけ
除外ドメイン返してはいけない情報源掲示板・転載サイト・競合メディア
公開日検索対象とする期間過去7日、今四半期、制度改定日以降
最大件数取得する結果数重要な一次情報を10件まで

AWSは、日付を確認できない検索結果は公開日フィルター利用時に除外し、条件を満たすと確認できた結果だけを返すと説明しています。そのため精度を優先する一方、検索結果が少なくなることがあります。「結果が少ない=重要な情報が存在しない」とは判断せず、検索条件を広げた再確認を運用へ残す必要があります。

3. プロンプト指定と違う理由

「公式サイトだけを参照してください」という文章は、人にもAIにもわかりやすい指示です。しかし、これはAIが指示へ従うことを前提にしています。AWSの開発者向け資料も、システムプロンプトによる指定はハードな強制ではないと注意しています。

AgentCore Web Searchでは、管理者がコネクタ全体へ設定するドメインポリシーと、検索時に指定するフィルターを重ねられます。許可リスト同士は共通部分だけが残り、除外リストはどちらか一方で禁止されていれば除外されます。つまり、現場の検索リクエストは管理者の許可範囲を狭められても、勝手に広げられません。

  • Policy管理者が全体の許可・除外範囲を固定
  • Request業務ごとにドメイン・期間を追加指定
  • Searchサーバー側で条件を統合して検索
  • Verify条件を確認できない結果を除外
  • Answer確認済みの検索結果だけをAIへ渡す

プロンプトだけに依存せず、検索経路そのものへ制約を置く設計です。

4. 誤引用を防ぐ3つの活用例

制度・補助金の変更確認

補助金や法令の調査では、官公庁と実施機関のドメインを許可し、改定日以降に公開された情報へ期間を絞ります。解説記事を完全に排除する必要はありませんが、申請条件の確定には一次情報を使うという役割分担を明確にできます。

商品・料金の比較

商品やSaaSの比較では、公式料金ページとヘルプセンターを優先し、過去30日などの期間を付けます。価格ページに公開日がない場合は結果から落ちる可能性があるため、日付フィルターを外した公式ドメイン限定検索も別に行い、二つの結果を照合します。

競合・市場ニュースの監視

既存のGemini Sparkで競合・市場ニュースを監視する記事では、対象と通知条件の設計を扱いました。今回のAI検索フィルターは、その前段で参照可能なドメインと期間を技術的に制限する仕組みです。監視の自動化と出典制御は別レイヤーとして組み合わせると、収集量だけが増える状態を避けやすくなります。

5. 導入前に決める運用ルール

AI検索フィルターは、設定すれば自動的に正しい結論が出る機能ではありません。許可した公式ページ自体が古い、発表日を取得できない、必要な二次情報を除外しすぎる、といった見逃しは残ります。最初は次の順番で、検索結果が減る影響まで確認してください。

確認項目最初のルール評価方法
情報源一次情報3〜10ドメインから開始必要情報の見逃し件数
公開期間日次7日、月次30日など業務別に設定古い情報の混入率
例外検索結果0件・少数時は条件を広げる再検索で見つかった重要情報
人の確認金額・契約・法令は原文を開く引用URLと本文の一致

MIRAINAの視点では、AI検索の品質は「回答が自然か」ではなく、使ってよい情報源、必要な鮮度、例外時の再検索、人が原文を見る条件の4点で管理すべきです。AgentCoreの別機能である自律決済についてはAgentCore Paymentsの記事、社内データを根拠に回答させる設計はRAGの導入ガイドで解説しています。

またAWSは、Web Searchの検索クエリがAWSインフラ内で処理され、第三者検索エンジンへ送られない「zero data egress」の構成だと説明しています。ただし、これだけで自社の法務・セキュリティ要件を満たすとは限りません。IAM権限、ログ、保存期間、入力してよいデータを自社の基準で確認してください。

6. まとめ

AWSが追加したAI検索フィルターにより、Amazon Bedrock AgentCore Web Searchでは、検索ごとに許可・除外ドメインと公開日を指定できるようになりました。管理者ポリシーを現場が広げられない構造で、プロンプトだけに頼らず検索範囲を制御できます。

まずは制度、料金、競合発表など、古い情報が意思決定へ直結する1業務を選び、許可ドメインと期間を小さく設定してください。結果が少ないときの再検索と原文確認まで決めて初めて、誤引用を減らしながら使えるAI検索になります。MIRAINAの生成AI活用支援では、情報源ポリシー、権限、評価指標を含むAIエージェント運用を自社業務に合わせて設計します。